2020.6.10
「UXを知ったばかりの私が疑問に思った4つのこと」〜新卒がUX MILK編集長に聞いてみた〜
こんにちは!新卒1年目の市来(いちき)です。
私は福岡の文系の大学出身で、デザインもプログラミングも未経験で内定者インターンシップでUX MILK編集部に来たとき初めてUX(ユーザー体験)という言葉に触れました。
そんな私が、UXについて勉強し始めて出てきた「UXの概念について、わかるようでなんとなく理解できなかったこと」を、上司であるUX MILK編集長の三瓶さんにぶつけてみました。
1. UIとUXとユーザビリティとは?
──まずはじめにUIとUX、ユーザビリティなど、似たようなカタカナの単語が多くて混乱したのですが、改めてこの違いについて教えてください。
三瓶:全部「ユー」から始まるからややこしいですよね。ひとつひとつ見て行きましょうか。
UIとは「ユーザーインターフェイス」の略で、ユーザーがシステムと直接やりとりする部分のことをいいます。たとえばカメラでいうとシャッターのボタンや、画面などのユーザーが操作する部分や情報を受け取る部分をUIといいます。
ユーザビリティは「製品がもつ有効さ、効率、ユーザーの満足度の度合い」のことをいいます。こちらもカメラの例でいうと、もち運びがしやすいか(カメラの重さや大きさ)やカメラの使い勝手(写真の取りやすさ)をユーザビリティといいます。
UXは「ユーザーエクスペリエンス」の略で、製品やサービスなどを使うときに得られる「体験」や「経験」のことをいいます。たとえばカメラの手ブレ防止の機能は、もし自分が運動会で走り回る子どもを撮影する親だったら、うまく撮れて嬉しいですよね。この機能はそういった方にとってよいUXを提供しているといえます。
あるいは同じカメラでもGoProのような小型なウェアラブルなカメラもありますよね。GoProってUIとかもほとんどないし、普通のカメラとしてはおそらく使いづらいのですが、エクストリームスポーツをやる方にとっては小さくてどこにでも取り付けられて丈夫なことが価値なわけです。なので、GoProはそういったアウトドアやスポーツでのUX、つまり使用体験を重視したプロダクトといえます。このように感じ方は状況や対象によってさまざまですが、総称してユーザー体験=UXといいます。
──なるほど!カメラという例があると想像しやすいですね。でも、UI/UXという表記もよく見ますし、一般的にUIとUXって混同されていませんか?
三瓶:混同されがちですね。先ほどの定義で言うと、UIは部品のことを指していて、UXはその部品で構成されるプロダクトを使ったときの体験を指しています。なので実は全然別のレイヤーの話なのです。
ただ、関係ないわけではなく、よいUXをつくり上げるためにはよいUIが必要です。なので、UIはUXの一部だと考えるのが一般的です。
──UI=UXではなく、UIはUXの一部なんですね。ちなみに、ユーザビリティが使い勝手というのであれば、それはUXとほぼ同じ意味のように感じるのですが、明確な違いはあるのでしょうか?
三瓶:ユーザビリティはあくまでその製品の使いやすさのことを指しています。確かに使いやすい製品はよいUXを提供していそうでが、使いやすさだけでよい体験というのは決まるでしょうか? たとえばすごく履きやすくて、長もちして、実用性の高いスウェットパンツだったらどこでも履いていけるでしょうか? この場合はファッション性だったり、TPOだったり、ユーザビリティ以外の要素も考慮しますよね? それを全部ひっくるめて、ユーザーが感じる体験となります。
──多機能で使いやすいスウェットパンツで会社に出勤しても、よい体験が生まれることは考えにくいですね……
三瓶:そうだね。ユーザビリティもまた、UXの構成要素の一部でしかないということです。仮に3つの言葉を一緒に使うとしたら、「ユーザビリティの高い(使いやすい)UI(見た目)を設計することは、UX(ユーザーの体験)を高めるための1つの手段である。」となります。
──似ている単語ですが、この文章を見ると確かにそれぞれが指していることは明確に違いますね! スッキリしました!
2. UXとUXデザインは同じ?
──UXデザインについて調べていくと、UXデザインのこともUXといっているような気がして、違和感を感じるときがあります。UXデザインのことをUXということはありますか?
三瓶:これは僕もUXを勉強し始めたときに感じた疑問なので、わかります。
僕の解釈としては「UX」はユーザー体験、「UXデザイン」はUXをデザインすること、つまり行為のことを指すので、言葉としての使い分けができると思います。
考え方は簡単で、わからなくなったら文中の「UX」という言葉に「ユーザー体験」という日本語を置き換えてみればわかります。
たとえば「UXがよくない」というセリフは「ユーザー体験がよくない」と置き換えられて、日本語として成り立ちます。
「UXをやりたいです」というセリフは「ユーザー体験をやりたい」となってしまって言葉の意味的にはよくわかりませんよね。この場合はおそらく「ユーザー体験(UX)の設計(デザイン)をやりたい」という意図だと思うので、「UXデザインをやりたい」というほうが齟齬がないですね。
──混乱しそうになったら、日本語に置き換えて考えたらいいんですね!
三瓶:もちろん、わかっていても省略して「UX」と言う場合も多々あると思うので、あまり神経質になる必要はないと思いますが…(笑)。英語の記事とか読んでいても適当な使い方をしている場合は結構ありますし、目くじらを立てることはないとは思います。
──UX初心者(ユーザー体験初心者)なので違和感がありますが、デザインが省略されていると考えたら、スッキリしました!
3. 見た目のデザインとUXデザインの違いは?
──デザインというと一般的には見た目のデザインのことを言っていることが多いと思うのですが、この場合の「見た目をよくするデザイン」と「UXデザイン」の違いとはなんでしょうか?「見た目がいい感じであってもUXデザインがよいとは限らない」ということが、わかるようでわからないです……
三瓶:一般的に「デザイン」というと「ビジュアルデザイン」のことを言っていることは多いですね。ビジュアルも、前述のUIと似ていて、UXを構成する一要素でしかありません。
──一要素でしかないのはなんとなく分かりますが…… 見た目がいい感じでもUXがよくない具体的な例があれば知りたいです。
三瓶:「見た目がいい感じであってもUXがよいとは限らない」例はたくさんあります。
- やたらスタイリッシュでかっこいいけど、どこになにがあるかわからない(情報設計ができていない)
- 美しさを優先するあまり文字が小さすぎて読めない(アクセシビリティが考慮されていない)
- きれいにつくられているけどターゲットが違うから使わない(ターゲット戦略のミス)
この例からわかるようにどれも見た目はいい感じでも、他の部分の考慮が足らず、悪いUXに繋がっています。
──見た目を優先するあまり、ユーザーの存在が置き去りになっているということですね!
三瓶:もちろん、見た目が良いUXに貢献するというのもあるとはおもいます。ただ、UXという視点ではそれは一要素であって、それだけではないということですね。あと、UXはそもそも主観的なので、どう感じるのかはユーザーそれぞれです。そこを考慮しながら、ユーザーにとってよい体験となるように、ユーザーのことを考えてデザインするのがUXデザインです。
──たしかに同じものでも使う人によって感じ方は変わりますね!だからターゲットを絞ったり、カスタマージャーニーを考えたり、ユーザー調査をして、ユーザーのことを理解する必要があるんですね!
4. なぜいまUXデザイン?
──ユーザーのことを考えてデザインする、と聞くと、もうすでに皆さんはそれをやってらっしゃるんじゃないでしょうか? 改めて「UXをデザインする」ということに違和感を覚えます。なぜいまUXデザインが注目されているのでしょうか?
三瓶:たしかに、UXデザインとわざわざ言わなくても、似たような思考でやっている方はたくさんいます。UXデザインの考え方はそんなに新しいものではないですし、優秀な方は自然とこういった思考で動いています。
──ではなぜいまUXデザインが注目されているのでしょうか?
三瓶:それをわざわざまた言い出している理由は2つ考えられます。1つはモバイル普及による多様な利用環境ともう1つはマーケットの飽和です。
モバイル普及による多様な利用環境
昔、WebサイトはPCの前で座って使うものだったので、利用シーンがある程度想定できました。どのようなPCであれ、大抵はスクリーンの前に座って、キーボードとマウスを使って操作するという体験をしていました。
しかしスマートフォンの登場によって、大きく状況が変わりました。もち歩きが簡単になったことで、このデバイスは屋外で使うかもしれないし、屋内で使うかもしれないし、急いでいるかもしれないし、暇つぶしかもしれないし、使う状況をいろいろ想定する必要がでてきました。
──UXデザインが注目された背景にはスマートフォンの存在が大きいんですね!
三瓶:そうですね。使う状況をいろいろ想定する必要がでてきたことで、大変なのはプロダクトのつくり手です。
いままでは画面の前に座っている人向けにアプリをつくればよかったのが、どこでどのように使われるかわからないものをつくらなければならなくなりました。
──使う状況をいろいろ想定する必要があるという、具体的な例があれば知りたいです。ユーザーがおかれている状況によって、どのようなことを変える必要があるのでしょうか?
三瓶:僕がよく出す例は乗換案内アプリです。
たとえば、駅で次の乗換を急いで探してるときに、出発駅や到着駅を全部入力するのは大変です。でもそこでアプリが位置情報を取って最寄りの駅を一番上に提案してくれたら直感的で使いやすいですよね。これが画面の中だけでではなく、利用状況を加味して生まれた機能だと思います。
──確かに、よく考えてみると私も状況によって乗換アプリを使い分けています!ちょっとした入力の差でも急いでいるユーザーには大きいですね!
マーケットの飽和
三瓶:スマートフォンが普及したばかりのときは、どのようなアプリでも物珍しくて多少品質が悪くても使ってもらえました。しかしいまは同じジャンルのアプリがたくさんあり、そんな中から選ばれるのは大変ですよね。
──そうですね! カメラアプリを考えると、複数の中から自分のお気に入りのものを選んで使っていますね。
三瓶:ユーザーに選ばれるために機能や、品質、価格でも競争はできますが、それよりも大事なのが「体験」、つまりUXです。「私のためにあるようなアプリ!」「かゆいところに手が届く!」といった体験で差別化する必要がでてきたのです。
──モノも情報も溢れているいまだからこそ、選ばれて使われ続けるものをつくるためにUXデザインの考え方が必要なんですね!UXデザインが以前より身近なものに感じました。 今日はありがとうございました!
この記事を書いた人
三瓶 亮
UX MILK編集長。株式会社メンバーズ LXグループ所属。LX(学びの体験)にまつわるイベントやコミュニティの企画・運営などをしています。ゲームとパンクロックが好きです。
市来 里穂
2020年4月入社。 ピープル&カルチャー室 LXグループのディレクター。オンラインイベントやワークショップなど、クリエイターがお互いにスキルを学びあうためのさまざまな学びの場を提供しています。