若手マーケターが知っておきたい!高齢者を助けるエイジテックとは?

こんにちは。
皆さんはシニア向けのプロダクトづくりで困った経験はありますか?
筆者もシニア層をメイン顧客としたサービスに関わっていますが、彼らのニーズを知る難しさを日々感じています。
皆さんの現場でも、開発チームが若いメンバーで構成されている場合、本来のシニア層の期待とは異なった成果物を作ってしまうことがあるかと思います。
そこで今回は、シニア層について全体像を把握し、基礎としてどのような点に留意してプロダクトを作れば良いのか考えてみます。

シニアの定義

一口でシニアと言っても、その定義はとても幅広いようです。
一般に日本では「高齢者=65歳以上の人々」を指します。

マーケティングの市場においてはさらに細かく、以下の4種類に区分けることがあります。

アクティブシニア

自分なりの価値観を持ち、趣味やさまざまな活動に意欲的な、元気なシニア層。旅行への欲求などへの欲求が高い。

ディフェンシブシニア

非就労で比較的収入は少ないながらも健常に暮らしている層。4つのなかで規模は大きめ。経済問題への関心が高い。

ギャップシニア

要介護とまではいかないが、日常生活の中で諦めや我慢が積み重なっている。「できること」と「やりたいこと」のギャップがある人たち。

ケアシニア

身体的な障害などにより、日常生活において家族やヘルパー、医療従事者の支援を受けている人たち。`

各世代でニーズが全く異なることが分かります。

将来の人口動態

内閣府が公表している「令和4年版 高齢社会白書」(※1)では、
2021年10月1日現在で日本の高齢化率は28.9%となっており、先進国の中でもかなり進行しています。
2025年には戦後に第一次ベビーブームで生まれた団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に、
2030年には第二次ベビーブームで生まれた団塊ジュニアの世代も60代になります。
そして、2065年には約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上になる見込みです。
高齢者の人口対比率は高まっていくことが分かります。

シニア世代のデバイス利用

総務省が実施した「令和3年 通信利用動向調査」(※2)によると、スマートフォン利用率は60〜69歳で70%、70〜79歳で40.6%、80歳以上で12.1%となっています。

60〜69歳と70歳以上の間でインターネットの利用状況に若干の乖離があります。

また高齢化に伴い、税負担の世代間格差や高齢者の孤立化など様々な問題が懸念されています。
そんな中、高齢者(age)とテクノロジー(technology)を組み合わせた「エイジテック」が近年注目されています。

エイジテックとは?

エイジテックは、高齢者の課題を解決するテクノロジーの総称です。
ここでは高齢者の分類が細かく分かれるように、エイジテックも様々な分野に分かれています。
ここでは分野ごとにエイジテックの事例を紹介します。

True Link Financial

True Link Financialはアメリカ合衆国にある企業で、高齢者向けの資産管理サービスを提供しています。
True Link Financialが提供するデビットカード「True Link Visa Prepaid Card」には、高齢者が資産を適切に管理するために必要なサービスが含まれています。例えば、高齢者の家族が酒販店やカジノなどでの支払いをブロックしたり、特定のお店での支払額に上限を設けたりすることができます。これにより、高齢者の詐欺からの保護や物忘れによる払い過ぎの防止が可能です。支払い情報やルールの設定は、オンライン上でも利用できるようになっており、高齢者が資産を適切に管理するために必要な支援が提供されています。

True Link Financial
https://www.truelinkfinancial.com/prepaid-card

Amazon Echo Show

Echo Showは、Amazonのスマートスピーカーで、音声アシスタント「Alexa」を使って、音楽を聴いたり、動画を見たり、スケジュールを管理することができます。シニアにやさしいインターフェースを持ち、タッチスクリーンを使って操作することもできるので、シニアにとっても使いやすいと評判です。
内側カメラがついているので、離れている家族とテレビ電話など簡単にコミュニケーションを取ることができます。

離れて暮らすご両親とつながる、スマートスピーカーの便利な使い方
https://www.aboutamazon.jp/news/devices/how-to-collect-with-parents-who-live-far-away-with-your-smart-speaker

Inow

アクティブシニアは健康的であるため、社会活動や就労に対して積極的な世代です。今後健康年齢が高まっていく中で、働きたいと考えるアクティブシニアは増えるでしょう。
また現在の50代がスマホ利用率が高いことから、就労に関わる情報の入手手段はオンラインでの間口が増えていきそうです。
Inowは25年以上のキャリアを重ねたベテラン人材と、それらを活用したい高齢者をAIを活用しマッチングさせるプラットフォームです。
企業がジョブ情報を公開し、求職者がその内容に対してインターネット上で提案を行うことが可能でこれらのやりとりは全ユーザーが閲覧できる仕組みです。案件自体はAI技術を活用することで、双方にとって、偶発的なマッチングを生み出しています。

Inow
https://get.inow.jp

Rendever

Rendeverは、アルツハイマー病や認知症で苦しむ人々を助けるツールとして開発されました。RendeverのVRヘッドセットではスキューバやダイビング、世界各国への旅行を行うことができたり、Googleマップを利用して昔行ったことのある場所を訪れたりすることができます。
Rendeverはこうしたサービスを介護施設や病棟にサブスクリプションで貸し出しており、高齢者複数名でVRコンテンツを楽しめます。
Rendeverのコンテンツは高齢者ユーザーだけでなく、施設や介護者がタブレットを通じてヘッドセットを操作できるように設計されています。そのため高齢者にはヘッドセットをつけるだけのシンプルなUX設計がなされています。

Rendever
https://rendever.com/

シニア向けプロダクトづくりで大切なこと

以上の事例から学ぶことができる点をまとめてみました。

1 「シニア」とひとくくりにするのではなく、アクティブ/ディフェンシブ/ギャップ/ケアなど対象ユーザーの精神的身体的状態がどの程度なのか把握する必要があります。

2 1を踏まえ、生活のどのようなシーン(介護、経済、仕事、孤立など)で困り事を抱えているのか分析、理解する必要があります。
特に2030年に激増するとみられている60代は、経済的、身体的余裕のあるアクティブシニアに属する人々が多いと考えられます。よってニーズもさまざまなシーンに隠れており、新しいサービスを生み出すきっかけになるかもしれません。

3 ユーザーに合わせ、UI/UXをシンプルにするのが得策といえそうです。特に、ギャップシニアやケアシニア層のような人々にとってはモバイル機器の操作が難しい場合があるため、音声入力や介護者の補助操作ができる仕組みを作るなど、本人の操作に頼らない設計が必要です。

ここまでお読みいただきありがとうございます。みなさまのプロダクトづくりの参考に少しでもなれたら幸いです。

引用文献

※1:内閣府 高齢社会白書 令和4年版
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/gaiyou/04pdf_indexg.html

※2:総務省 令和3年 通信利用動向調査
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/220527_1.pdf

この記事を書いた人

金城初奈

金城初奈

2021年入社。現在ディレクターとしてスポーツ系アプリの開発業務を担当。学生時代は福祉について学んでいました。ドリアが好きです。

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