ソーシャルクリエイター視点で「脱炭素」と向き合ってみる

近年「脱炭素社会」「カーボンニュートラル」などのワードを耳にする機会が増えています。2020年10月日本政府は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました(※1)。メンバーズではソーシャルクリエイター(※2)の輩出に力を入れていることから、今回はソーシャルクリエイターの視点で、国内企業の「脱炭素」に向けた取り組みとWebでの情報発信の事例についてご紹介します。

※1 環境省脱炭素ポータル
※2 ソーシャルクリエイター デザイン思考を持ち、ビジネスの推進や制度設計、アウトプットを通じて社会課題の解決を図ろうとするクリエイター(職人)志向性の高い人材のこと

「脱炭素」の意味と認知度

「脱炭素」とは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを意味します。「脱炭素」と並びよく聞かれるのが「カーボンニュートラル」ですが、「カーボンニュートラル」とは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることです。「カーボンニュートラル」を実現して、温室効果ガス排出量実質ゼロの「脱炭素社会」を実現させようというわけです。
内閣府の世論調査(※3)によれば、「脱炭素社会」について一般の認知度は68.4%で、多くの人が「脱炭素社会」の実現に向け二酸化炭素などの排出を減らす取り組みについて「取り組みたい」と考えています。しかしながら、68.4%のうち「脱炭素社会」について「知っていた」と答えた人は33.2%、残りの35.1%は「言葉だけは知っていた」と回答しており、取り組みは行いたいが「脱炭素社会」について具体的な内容は知らないという人が珍しくありません。「脱炭素」について全く知らない人・具体的な内容を知らない人にも、意味を知ってもらいアクションを起こしてもらうことで、目標達成に向けて二酸化炭素排出抑制を加速させられると思います。

※3 内閣府 世論調査 令和2年度 気候変動に関する世論調査 世論調査>令和2年度>気候変動に関する世論調査>2 調査結果の概要 1.地球温暖化について (3) 脱炭素社会の認知度

「脱炭素」が急がれる理由

なぜいま「脱炭素」が必要なのでしょうか。理由は、気候変動による危機を回避するためです。世界の平均気温は上昇し続け、すでに日本においても気象災害をはじめ、農林水産業、水資源、自然生態系、などへの影響が指摘されています。
脱炭素に向けた身近なアクションから実行していかなければ、私たちの生活をも脅かす気候危機がすぐそこに迫っている状況なのです。

このような状況でソーシャルクリエイターとしてできることの一つに、「脱炭素」に向けた取り組みをWeb、SNS、ソーシャルメディアで情報発信することが上げられます。

以下、国内企業の「脱炭素」への取り組みとWebでの情報発信について事例(取り組みと特徴)をご紹介します。「脱炭素」への取り組みの中でも、今回は消費者と直接関わりのある、容器包装、特にプラスチック容器に注目します。
プラスチックは主に石油を原料として作られており、日本では多くが燃やすことによって処分されています(※4)。プラスチックゴミ燃焼時には温室効果ガスが発生するため、消費者と企業が一体となってプラスチックゴミ削減に取り組めば、より二酸化炭素排出の抑制に貢献できると思われます。

※4 一般社団法人プラスチック循環利用協会 「2019年 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」  廃プラスチックの有効利用率は、マテリアル,ケミカル,サーマルリサイクルの比率がそれぞれ22%,3%,60%。燃焼時に熱エネルギーを再利用した場合、サーマルリサイクルに含まれるが、燃焼時に温室効果ガスを排出してしまう。

事例1 ソニー

プラスチックを使用しない100%紙素材のパッケージ(※5)

取り組み

  • 短年成長植物を素材に使用(竹やさとうきび)
  • 木材パルプの繊維に再生紙や繊維の長いオーガニック素材を組み合わせて継続的に再利用
  • 成形加工(凹凸をつけるなど)によってインクを使わずパッケージに印字
  • パッケージに着色しない

Webでの情報発信の特徴

  • ページ上で画像や図が占める割合が多く直感的に理解できる
  • 製品画像を複数用いており製品理解と製品イメージがしやすい

※5  ソニーのオリジナルブレンドマテリアル

事例2 キリン

容器包装の軽量化継続と材料の非再生資源依存の低減(※6)

取り組み

  • 国内飲料事業で紙容器のFSC認証紙使用比率100%
  • びん、PETボトル、缶など容器包装の軽量化
  • 再生PET樹脂を100%使用した「R100ペットボトル」の採用拡大
  • PETボトル、缶のリサイクル強化に向けて回収支援や回収試験の実施

Webでの情報発信の特徴

  • 取り組みについてのキリンの基本的な考え方や関連するSDGs項が明示されている
  • 成果指標、 目標値(期限)、成果報告までが開示されている

※6 キリン 容器包装の取り組み

どちらも容器包装(プラスチック容器)についての取り組みを発信するWebページですが、印象や得られた情報の質が大きく異なるのではないでしょうか。

ソーシャルクリエイターとしてできること

今後「脱炭素」に向けた取り組みの情報開示や成果報告が、さらに重要になることでしょう。環境に配慮した包装の製品を選ぶ・容器包装をリサイクルに出すなど一人の生活者として取り組めるアクションはもちろんのこと、ソーシャルクリエイターとして、

  • 「脱炭素」についてより理解を深める
  • 「脱炭素」に関わる技術や制度の理解を深める
  • クライアント企業や国内外企業の「脱炭素」に向けた取り組みの理解を深める
などが「脱炭素」推進への貢献に繋がると思われます。
「脱炭素」理解・「脱炭素」のための技術や制度の理解・クライアント理解などと、ユーザー視点のサイト設計や情報設計が掛け合わされることで、事例1、2のようなWebでの情報発信が可能になると考えます。

気になった方は、ぜひ「脱炭素」に取り組む企業のWebサイトや、政府・その他機関のWebサイトを覗いてみてください。

この記事を書いた人

金田 理沙

金田 理沙

2020年にメンバーズに新卒入社。現在ディレクターとして、Webサイト運用におけるディレクション業務を担当。趣味は建築巡り、写真。

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